カの文化の――いわゆる高度なる文化の――面だけをうつし植えようとすれば、現にこんにち日本代表として外国へ行ける人々が、三井一族その他の特権階級の者であるように、人民すべてのためのよりゆたかな、人間らしい生活を約束するものとはなりません。

          五

 日本の自然と社会の条件に調和される文化というものは、外から押しつけたものではないでしょう。基本的には日本の人口の大多数を占める働く人民の生存が、正当な社会的勤労によって保証されるという条件がまず確立されなければなりますまい。民族の自由と独立ということは、いまの日本のようにひと握りの特権者が、他国の資本主義擁護の政党の利益とむすびついて、自国の人民を苦しみにつきおとしている状態の時には、人民自身の生存と文化の擁護のために闘うべき中心的課題になります。現代の日本の文化の中心題目は、民族の民主的・人民的自立、再燃するファシズムとの闘い、ファシズム文化の害悪との闘いです。文化も人民解放の歴史の刻々の段階に応じて人間的表現の核を前進させつつあります。
 日本のわたしたちにとって、もっとも警戒すべきことは、封建的権力とファッシズムが、
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