っと文学に入ってこなければならないのは、自然科学よりも社会科学です。
三
私は伺いたいと思います、「正しい文化」というのはどういう文化でしょう。そして、この言葉から私たちが直感する理性と情感とがとけあってもっとも高い人間性、もっとも複雑な人間社会の諸様相を反映する民主的な文化を意味するならば、日本の私たちの今日の現実のどこにそのような「正しい文化」があるでしょう。まじめな人びとは、少しでもよい、正しい――少くとも人間の理性を承認した文化をうち建ててゆきたいと努力しているところだ、と思います。そしてそういう方向に努力されつつある文化活動そのものを正しい文化というのではないでしょうか。
共産主義的独裁社会形態における文化ということは、いまのソヴェトのように社会主義的民主主義の社会における文化ということでしょうか。こういう比較は現実的にこんにちの資本主義国内でどのような文化発展の可能性が保たれているかということと具体的に比較していわれるべきだと思います。
たとえば、日本では百三十万の未就学児童があります。奴隷的大学法案が出されています。言論出版の自由というものは
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