さん、自分、自分の子という生きた歴史の中に、ますます多くのパーセントで、生きよい社会の条件を拡大し確保してゆくという努力をつづけることが肝要です。若い方は、どなたも御存知です。服飾の上で自分の色彩を統一して、どれとくみあわせてもみっともなくないようになさいということを。美しくなろうと思えば、自分の体質と皮膚とをよく知って、自分によく合った化粧品をきめて、つづけてゆき、新聞にでる総ての化粧品の広告にまどわされることは不必要であることを。
 人生の進歩的な建設に、わたしたちはこの常識をもって闘うべきです。歴史の中で次第によりよいものが勝利してゆくために、わたしたちの生涯の現実そのものでパーセンテージをたかめてゆくこと。これは、はなばなしくないし、英雄にみえないかもしれません。しかし、歴史は一分から、一時間から、一日からきずかれつつあります。[#地付き]〔一九四九年六・七月〕



底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「むつび」三菱鉱業研究所職員組合機関誌
   1949(昭和24)年6・7月合併号
※三菱鉱業研究所職員組合文化部からの次の質問に対する答え。
一、芸術と娯楽の境界。いわゆる大衆の求めるものが娯楽だとすれば、芸術家としてこれにいかに答えるべきか。
二、文学者としての立場から科学技術者、或はその人間性に対する忌憚ない注文。また科学技術者をテーマとする文芸作品に対する考えは?
三、共産主義的独裁社会形態における文化を正しい文化と考えるか。
四、アメリカ式民主主義文化が日本の現在の生活環境に調和し得ると思うか。
五、日本の地理的・歴史的環境のもとに当然調和される文化は?
六、科学的真理において階級的真理というものが存在するか。またその妥当性について。
七、婦人科学技術者が封建的社会機構のために進歩を阻まれている点について。
八、職業婦人が結婚までの一時的なものに考えられている点について。
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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