語っている。同じ時代に発表されたロシア作家の作品でも、「赤色親衛隊」などのもっている諸要素は、セラフィモヴィチと全く反対の調子のものであり、作者フールマノフの南方的でない気質を示していることが見られるのである。
ところで、現実について観察を進めてゆくと、自然と人間との交錯の関係は、以上にのべただけの単純な地理的な相互的影響に止まらず、更に人間の側から猛烈な積極性が働きかけられることが見られる。人間は自然の一部として地球の上に棲息しているのではあるが、その生存意欲によって、人間の生活の進歩と豊富化のためには、山を河に変え、水を火に換えている。人間社会と自然とは、人間による自然力の最大な受用、制御、生産力への転換としての関係にある。そこで、人間社会の構成が生産手段の進歩、複雑化するにつれて、同じ人間であっても、直接、体でもって自然と組打ち、泥にまびれ、水にぬれ、坑にもぐって働かねばならない者と、それらの労働の結果に生れた利益だけを物質的に、精神的に利用して、自身の手は傷めず生活する者とがあらわれて来る。
自然に対する感情の社会性、階級性というものの文学以前の分岐点は、ここに根を置いてい
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