界史のこの雄大なプログラムにしたがって解決してゆかなければならない。
発展と成長とのおさえがたい力を信じなければならない。夜の間にも動いている歴史を見透さなければならない。人間の愛情を見るとこのことはよくわかる。小さいこどもが歩きはじめたとき、その親やぐるりの人は何といって見るだろう。今はヨチヨチ歩きの段階だから、この期間は完成させなければならないといって、もっとよく歩けるようになる日のために、下駄やくつをよろこびをもって用意しないだろうか。
わたしたちが人間を愛し、その価値を評価する意味で、自分と人との「自我」について考えるとき、その自我の最大発展の可能を希望することはへんだろうか。歴史がその複雑さでわれわれの前に示している最大の可能にまで、自我を発展させ成長させ、新しいものにしてゆく機会をつかもうとすることは幼稚なことだろうか。
人間が変革されなければならないということは、人間を変革し得る社会をもたなければならないということを常識とするまでに、一人一人の心の中で半封建的であった日本の社会感覚が変革されなければならないということである。この生きた厳粛な相互関係をぬきにしてわたし
前へ
次へ
全5ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング