世界において特殊な責任の地位にある」「原子爆弾は、われわれが人類の存続を考える限り、それを大規模の戦争に用いることを望んではならぬ程度まで発達している」と。
 原子力が人類の殺戮の武器であってはならないことを確信して、その禁止と平和のために行動している科学者はジョリオ・キューリー博士はじめ、世界各国おびただしい数にのぼっている。ストックホルムの平和大会が世界に原子兵器禁止のアッピールを行って、数億ちかくの署名をあつめつつある。そこには、社会のあらゆる面に活動している人々――労働者の組織、キリスト教の団体、婦人、青年少年の団体、各種の文化専門グループの人々が加わっている。
 世界の良心的な文学者が、原子兵器禁止を支持し、平和のために発言しているのは、ただ現代の人類的な課題をうけもっているというだけの現象なのだろうか。それとも、そこには何か文学者として独自に現代史の中に見出しているよりどころがあるのだろうか。
 アインシュタインその他の人々のプリンストン警告声明を、きょう改めてよみかえすと、わたしたちは、そこにあらわされている偉大な科学者たちの、極めて率直・善良な責任感について感動しないで
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