稿、それから一九〇五年にゴーリキイが宣伝文をかいたというために検挙されたペテロパヴロフスクの要塞監獄の監房の写真、さらにトルストイやチェホフなどとあつまっている記念写真、レーニンと西洋将棋をさしている写真など興味ふかいものが並べられた。
この展覧会で私の心をうった一つのことは、ゴーリキイの幼年及び少年時代の写真というものが一枚もなかったことである。レーニンの三つくらいの時の愛らしい写真はソヴェト同盟の幼稚園の壁にかけられている。しかしゴーリキイは一枚も子供時代の写真をもっていない。つまり写真なんか撮ってもらわなかったそういう幼年・少年時代が伝記的な作品「幼年時代」「人々の中」「主人」「私の大学」等に描かれているのであるが、この写真のないことでも幼いゴーリキイが子供心にそれと闘いつつ成長してきた野蛮な暗い愛情のない環境が想像されるのであった。
この展覧会はロシアの若い人々の間にどの作家がもっとも多く愛読されているかという統計をかかげていた。外国の作家で一番愛読されていたのはジャック・ロンドンであったと思うが、ロシアの古典作家ではトルストイ、現代作家ではゴーリキイが最高であった。
ゴ
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