て生きている人たちが、幸福をどこかでしっかり感得しているように見えるのは、以上のような理由によるのだと思われる。現代の生活は複雑で、幸福もそれをこわす条件も四方八方のつながりのうちに生かされて変化を受けつつあるのだから、今日私たちが、現実の前で膝をついた形でなく、現実の上に美しく健気に立った形としての幸福を獲ようとすれば、自分の生まれ合わせた社会と自分とについてのきわめて広い明晰な把握がなくてはならなくなって来ている。自分たちの不幸を底まで理解して、それを堅忍し、克服してゆく気魄がなければ、幸福感を味うことができにくい時代に来ているのである。破壊の行われているときにもやはり人類の幸福のために続けられている努力があって、それはどこにどんなに行われているかということを見きわめる力が求められて来ているのである。
 若い女のひとは、どっさりいろいろの文学作品を読んでいる。彼女たちは、どんな風に文学を読むのであろうか。女のひとが、特に幸福というものを何か波瀾のそとのもの、悲しみの外のものと固定させた形で追求していることについて疑問が生じたとき、私の心にひきつづいて起った問いはそれであった。女のひ
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