は全部賛成だけれども、天皇制を廃止しようというのだけが気に入らない、という方もあります。
 けれども、しずかに考えてみると、この好き、きらいの感情は、よほど吟味してかからないと、とんだ私たちの不幸であると思います。
 共産党が、戦争を間違ったことであると主張したとき、戦争気分に煽られた人々は、たしかにその意見を、きらいだ、と思ったのです。にくらしい、と思ったのです。
 ところが、今日の現実は、共産党の見とおしが、全く正当であったことを証明しております。
 本当に、日本が民主の国柄となり、男も女も、笑って働いて、生きて行ける国になるために、今日共産党が、真の民主主義を求めて、主権が君主にある制度に反対していることは近い将来において、必ずや正当であったことを、歴史の事実によって証明されるでありましょう。
 現実の刻々を鋭く見とおして、長い未来に及ぶ国民の幸福の建設のために、計画を立て、一つ一つと実行にうつしているところに、日本共産党のたのもしさがあると思います。
 フランスでも、日本と同じように、今度初めて、婦人に参政権が与えられました。昔からその優美さで世界にしられているフランスの婦人たちは、第一回の選挙に、どう投票したでしょう。
 彼女たちは、百五十三名の、共産党代議士を選び出して、共産党を第一党としました。その中には十七名の婦人代議士が加っており、他のどの政党よりも、多くの婦人が当選しました。何人かの未亡人があるというのも、何と意義深いことでしょう。
 フランスの婦人たちは、この戦争によって流した無限の涙と、引き裂かれ失われたすべての愛のなきがらの中から、再び人民を戦争に追い立てるような権力のとりのぞかれた世界を創ろうと決心して、自分たちの党、共産党を選んだのでした。
 日本の婦人のやさしさ、忍耐づよさは、決して愚かさと等しいものではありません。
 世界の眼が、日本の総選挙に、注意ぶかく向けられております。
 連合軍司令部は、総選挙の結果によっては、もう一度議会を解散させる方針であるということを、アメリカの新聞から伝えられました。
 私たちが、まだ十分自覚し用意していないすきに乗じて、再び人民に軛《くびき》をかける金持、地主、ダラ幹の政党が、バッコしようとしている気配があるからです。
 皆さん!
 私たちの一票は、是非とも私たちの幸福のために使いましょう。
 きの
前へ 次へ
全4ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング