私たちは、今日の日本の立て直しと、自分たちの生活改善の実際の必要に立って、その立場から政党を選んでゆくのが、一番正しいと知っております。
例えば、今私たちの目の前に河があります。流れは急で、一人一人ではとても歩いて渡れません。うしろからは、飢餓という獣の大群が、刻々迫って来ます。生きるために、どうしてもこの河一つは越さなければならない。
こういう危急の時に、爪先も濡らさず岸に立って、諸君、まず、橋を作る材木を出し給え。マァ、何の彼のいわず、材木だけは、ともかく僕にわたし給え。いずれ橋はかけてやると、筋の通った将来の計画も誠意もなしに演説している者を、誰が対手にするでしょう。これが、既成政党の姿です。
このとき、ザブザブと胸まで急流にふみこんで来た男があります。その人は運べるだけの材木、俵、繩などを自分からもち出して、叫んでいます。オーイ、みんな、手持ちの材料をもち寄ろう。早く橋をかけてここを渡るんだ。人筏こしらえよう。女、子供は、先に渡すんだ。そう合図をしています。
私たちは、その声に答えずにはいられません。すぐ男は肩組みして水に入り、弱いものは中にはさんで、働きはじめるでしょう。
日本共産党は、先ず身をもって自分から河へふみこんで来ているこの男のように、誠実で、献身的な政党だと思います。
日本を今日の破滅におとしいれた何よりの原因は、戦争です。今になって、これを知らないものはありません。この戦争が、日本の全国民を不幸にし、経済を破壊し、飢えさせるものであることを、はっきり見とおして、十何年も前、そもそも戦争のはじまりから、この戦争に反対し、戦争をもたらす日本の天皇制の政治のやりかたに反対して来た政党は、日本共産党だけでした。今日、平和日本の建設または民主日本の誕生などといっている政党のほとんど全部は、戦時中の議会で、すべての軍事費に賛成して来た人々の集りです。
真心から婦人の幸福を思い、差別ある待遇を改善しようとして、あらゆる場面で、ともども闘って来た日本共産党が、人間味のない党であると、どうして思えるでしょう。たとえ、イワシにしろ、今日、現実に、私たちの食膳へ配給されるようになった食糧の人民管理の方法は、共産党が生活問題解決の一歩として、既に実行で示している一つの例です。
共産党という名がきらいだわ、という婦人もどっさりあります。ほかの意見に
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