ている楽しいものが、どんどん逃げてしまったので、パンドーラはびっくりして蓋を閉めてしまった。そしたら最後に箱の中に残ったのが、希望だったのでした。このようにパンドーラも希望だけは失わなかった。そして又、人間もあらゆるものを失っても、最後まで希望だけは失わないでのこしているという話です。それから、人間は、いろいろな不幸な目にあうようになったが、その源を考えて行くとパンドーラが箱の蓋を開けたとき、同時にたくさんの病気とか、たくさんの悲しみとかいうものが、箱から溢れ出たからだということが、パンドーラの話に云われているのです。
それから、ずうっと社会が進んでまいりましてから、聖書の書かれた時代、あの時代になりますと、アダムとイヴの話があります。
これによりますと、アダムとイヴの二人の人間が作られたことになっております。そして、この二人の人間は禁断のこのみを食べたため、神の怒りによって楽園から追払われました。
それから人間は、何処かに楽園があるわけだと考えるようになりました。そこでは、人間はみんな平等であり、花は爛漫と咲きほこり、人情はあたたかくて生活しよく、大変美しく楽しい、そこがエデン
前へ
次へ
全19ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング