ん永い間あったわけですが、そうした野蛮な時代から、人間は、幸福について、考えていたのであります。只それが幸福という言葉によって、はっきり考えられてはいなかったのです。どういうふうにして生きていたかというと、出来るだけ便利な、出来るだけよく生きたいという、言葉にならないような希望から、人間は沢山の発明をし、そうして、だんだん社会が発達して来たのであります。
ギリシャ神話の中にプロメシュースの神話というのがあります。これは、火の起源の話ですが、プロメシュースという若者が人間の生活に火が必要だと考え、天上の神様の火を盗んでまいりました。人間が火を得たということは人間の社会の発達のために、大きな歴史であったわけですが、それを、ギリシャ神話では、プロメシュースが火を盗んで来たという具合に話しているわけです。
このプロメシュースの話は、私たちにとって興味もあるし、昔から沢山の芸術の材料になっております。
しかし、これは、伝説でありまして、実際は、木の枝が風にこすられて、火が出るのを人間が発見し、その火を葉っぱに移して、だんだん自分の生活の中にいれて、それまでは、生で食べていた物をだんだん焼い
前へ
次へ
全19ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング