その真似をして髪を切るとか、何か贈り物をしたいために、三十円で私を買って下さいという手紙を或る会社の重役に送ったとかいうことについて、非難の言葉を表現しておられるのである。或る人は真の芸術を理解させるようにしなければならぬという対策を提案し、或る人はレビュー劇場が商売とは云いながらすこしは宣伝に公徳心を加味して欲しいと要求しておられる。
これ等の記事を読んで私は、教育家が或る程度固定した頭で現実に対する処置を考えている間に、娘たちはよかれあしかれ何と素早く、しかもその愚劣さに於てリアリスティックに動いているであろうかという事実に、心を打たれた。例えば、或る女学生が、私を三十円で買って下さいという手紙を誰に当てて書いたかといえば、その相手としては外ならぬ会社の重役を選定したという事実の裡に、今日の社会の実物教育が娘たちの心の中に、どんなことを思いつかせる可能を日夜植えつけているかという事がわかる。私達が沈思に誘われる点はレビューガールへ贈り物をしたいという熱中した娘の心持がいいかわるいかではなくて、寧ろ、金に困った現代の女学生が思いついたのは何であったかという事である、親の金をもち出そ
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