復興する」の中で「囚われた大地」を称讚し「トルストイ、ドストイェフスキーの手法とともにその鋭く、はげしい精神をも正しくつたえているように思えるたしかな本格的な、小説の名にあたいする小説である」といっている。
長篇のわずか半ばで加えられたこのように横溢的な評言から、最も有効に自己をコントロールし終らせることは、創作についてなみなみならぬ鍛錬を重ねた作家にして初めてなし得るところであろう。
社会主義的リアリズムの立場に立って性格、心理を描くという課題も、この作品の創作的実践においては未だ解決されたといえないのである。
同じ作者によって書かれた「童子」、「村の地主」などの作品にもふれることであるが、われわれは広汎な意味でのプロレタリア文学における自然描写の問題、方言の問題などについてもリアリズムの理解を一層深めなければならない。私はこの力作の検討の上に立って作者がさらに健康な発展に向うことを切望してやまないのである。[#地付き]〔一九三四年十月〕
底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
1980(昭和55)年12月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日
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