して僅か数行で説明しているA村の地主二人が二大政党に分れて対立し、それにつれてA村の村民も二派にわかれていること、※[#「◯」の中に「金」、屋号を示す記号、187−14]を次第に蚕食しつつある新興地主※[#「仝」の「工」に代えて「二」、屋号を示す記号、187−15]とその強慾な番頭下山、地主の変るごとに戦々きょうきょうたるA村の小作たち。清司や与作を含むA村の農民の生活にとって、こういうさまざまのいりくんだ関係はどんなに日常の制約となっているか、米作と炭やきと日雇稼ぎとはA村の全生活でどういう組合せになっているかというようなことが、じっくりと全篇の基調としてとりあげられたならば、部分部分の活気ある描写も根の深い実感をもって迫って来たであろうと思われる。
もっとも、もしこういう立場から村とそこの人々とを掘りきわめるとなると、作者は全く別な、もっと立体的な構成の方法をとらなければならなかった。
「囚われた大地」の、どちらかというと自然発生的な構成の方法はA村をつよく作者が手もとによせて引つかむには不便な方法であり、また逆に作者によるA村のつかみかたが、この構成の方法に反映しているとも見ら
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