誕生しようとしているらしい長い小説の安否を訊ねるようになった。
 いよいよ「囚われた大地」が一部発表された。前後して社会主義リアリズムの問題が、それらのすべてが正鵠を得ているとはいえぬさまざまの理解の方向をもって提唱されはじめた折から、作品は複雑な社会性を反省しつつ一般の感興を呼び起し、華やかな登場の拍手をもって迎えられた。
 今度改めて単行本として完成された「囚われた大地」を読み、私は作者の努力をやぶさかならず買うと同時に、種々の感想にうたれた。
 作者は、一通りこれを書き終った今日、最初の着実な計画、農民の生活を描くという重大な目的にふりかえって、どのような感想を持つであろうかと思ったのである。

 この八百枚余の長篇小説の舞台として津軽のとっぱな十三潟附近の寒村がとりあげられている。程ケ谷の紡績工場から故郷のその村に向って汽車にのっているヨシノとサダ子につれられて、二人の娘の気質の相異を理解しながら、読者は次第に北国へ向い、やがて峯子に出会ってA村に入ると、そこには、貧農の息子でのちに急進的に行動する清司、動揺する地方の人道主義的インテリゲンチアである小学教師の木村、窮乏による放
前へ 次へ
全9ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング