識のなかで結びつけられていたからこそ、白粉が匂うことにもなったのだと思う。女性の一生の見かたのなかに日頃からそういうモメントがふくまれていることには寸毫も思いめぐらさないで、全級の前での嘲りをこめた叱責と水で洗いおとさせるという処置しかできなかったのも、おそらくはその時分の正しさ[#「正しさ」に傍点]についての常識の粗野さであったろう。
 こんな自然な話が自然な話として語られるようになるまでに、わたしたちの日本は、あんまり多くの犠牲を払わなければならなかった。



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「お茶の水」第60号、お茶の水女子高等師範学校附属高等女学校校友会誌
   1948(昭和23)年
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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