は、子供の教育に責任をもつのは、父兄であるとされていました。けれども、日本の教育方針が改められて、軍国主義の教育をすて、国民の一人一人が社会を運営してゆく能力をもつために民主的な教育が要求されてから、母も父と並んで、子供の未来に重大な関係をもつものであることがはっきりして来ました。この頃、小学校に出来た「両親と先生との協議会」はそれです。日本の一人一人のお母さんは選挙権や被選挙権をもっているばかりでなく、ほんとに母として、子供と一緒にこの社会をよくしてゆく権利と責任をみとめられたわけです。

 今日の日本の主婦はうち[#「うち」に傍点]のことで精いっぱい、というのは事実です。だからこそ、ことしは、民主的に托児所をこしらえようとする動きもおこっても来ているわけです。インフレーションのせつなさはどこでも主婦の胸にこたえて、主婦も何かで家計の増収をはかりたい希望があります。子供をかかえた未亡人も、三年目のことしは、もう行きつくところまで来ました。子供があるからこそ、働く必要は一層痛切だのに、その子供のために勤められず、まとまった内職も出来ないという事情のために生れている悲劇はどんなに多いでし
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