供のためにと、おいも[#「おいも」に傍点]のきんとん[#「きんとん」に傍点]を煮ていた主婦たち。さまざまの人の姿の上に一夜があけて、まずどうやら年を越した、おめでとう、と云い交すひとの心のなかには、あながち、古いしきたりばかりはありません。やはり、ことしという一年にかけている何かの新しい希望があるわけです。
ことしの三ガ日も例年どおり日本髪が多うございました。お正月の日本髪は吉例のようですが、ことしは、同じ日本髪でも、満艦飾ぶりが目だちました。日本服の晴着でも、いくらか度はずれの大盛装が少くなかったようです。あの混む省線で、押しあい、へしあいするなかに、かんざし[#「かんざし」に傍点]沢山の日本髪、吉彌結びにしごき[#「しごき」に傍点]まで下げた娘さんがまじって、もまれている姿は、場ちがいで気の毒な感じでした。
美しくありたいという、青春のねがいが、こんな場ちがいな形でまで溢れ出さなければならない、ということや、その人として一番美しく飾った姿といえば、やはり高島田に振袖、しごき姿であるというところに、心をうたれるものがあります。自分を美しくするために、今日の日本の若い女性も、そう
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