とってかくことのできない一つの仕事でした。憲法審議のための委員会に一人二人の婦人代議士が出席していたとしても、彼女達は具体的に人民憲法を作るように審議を進めることはしませんでした。改正憲法の中に奇妙な特殊性として天皇が存在しつづけていることを考えることはしませんでした。「政治は台所へ直通する」といって、あれほど演説した婦人代議士は今日の物価に対して、はたしてその一銭でも安くする力をもったでしょうか。日本の忍耐づよいいく百万の女性たちはこの点をよくよく思いかえしてみなければならないと思います。インフレーションの悪化は防ぎようもなくて、先日のラジオで石橋蔵相が何といったでしょう。彼は聖書の文句を引用しました。「幼な児の如くならざれば天国に入るを得ず。」国民は幼な児のごとく政府を信頼して、三月危機を突破してくれといいました。
 戦争中、国民の幸福のためにこの戦争はおこなわれているのである、必ず勝つ、日本は東洋の主となると政府がいったとき、日本の国民はそれを信じたと思います。幼な児の如く信じたと思います。大人のように世界の事情を考えて日本の実力と照らし合わせ、国民の犠牲を考え、一部の特権者の指
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