にあって闊達自在の活動をし得る自信こそプロレタリア作家の持つべき生活力の強さという風に言われているのであるが、この闊達自由ということに就いてはその響きが今日の万人にとって望ましいことであるために、一層周密にその方向や内容が調べられる必要があると思う。青野氏が自身の解釈に従って自身進退せられることは、もとより氏の主観的な自由である。しかし、それが必ずしも客観的な望ましき内容に於ける闊達自在の活動であるかどうかということに就いては自ら異る見解もあろう。
プロレタリア作家の文学に於ける任務は、その芸術の中で、今日やかましい大衆の問題を正当に理解し表現して行くこと、芸術に於ける民族的な特徴を広い偏見のない目で現実の中に見極めて形象化してゆくこと、及び芸術作品に描かれる人間性というものに就いての統一的な掘り下げ等を通じて、新しき時代に役立つヒューマニズムの文芸思潮の内容づけをしてゆくことであろうと思う。今日過去の私小説を否定するものとして、社会的な客観小説が提唱されているが、この文学に従来の近代的扮装に身をかくした戯作者風な無批判な行動の追跡に代る真に大衆的と言われるべき内容を与えて行くこと一つでもプロレタリア文学の作品が求められている責任は軽くないのである。
[#地付き]〔一九三七年四月〕
底本:「宮本百合子全集 第十一巻」新日本出版社
1980(昭和55)年1月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
親本:「宮本百合子全集 第七巻」河出書房
1951(昭和26)年7月発行
初出:「唯物論研究」
1937(昭和12)年4月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年2月17日作成
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