今日の文学と文学賞
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三九年八月〕
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 どこの国にでも、文化、文芸の業績に対する賞というものはあるらしい。その詮衡が世界的な規模で行われ、最もひろい意味で人類的な影響をもつ仕事に与えられるという点で、ノーベル賞が国際的な権威をみとめられていることは、誰でも知っている。近頃になってからのドイツでは、そのノーベル賞をドイツ人が受けることを禁じ、ドイツ民族文化、文芸の最高賞としてゲーテ賞を制定したことは、当時一般の人々に何となく理解しがたい印象を与えた事実であった。あたり前の考えで云えば、一民族の誇りというものは、世界的、人類的な規模で評価され得てこそ誇りというに価し、そのような業績を生む人物を一人でも多く生み出すことにこそ、民族としての歓びもあるものであろうと思われるからであった。
 ところで、文化、文芸に関する賞を、一番どっさりもっている国はどこだろうか、フランスも尠くないように思われる。が、私は寡聞で有名なゴン
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