w生教師によって失業する危険におかれている。
 これらの困難に加えて六・三制は全額国庫負担の義務教育として実行されていない。両親たちが子供の教育のために支払わなければならない金は、事実上六年間からさらに三年間を追加されたことになった。そのためインフレーションで苦しむ両親たちは労働基準法の網目をくぐって、六年を終了した子供が何んかの形で収入をもつことを希望している。この頃ブリキ屋、大工その他の職人が小さい弟子を連れて働いているのをよく見かける。小さい弟子たちの年齢は十三、四である。彼等は六・三制の三の部をブリキを叩いているのである。文部省は六・三制の三の部は、通信教授を受けることで完うしたものと認めるということを法文化そうとして一般の批判をうけた。少年労働が日本の繊維産業の基本的労働力である。すべての繊維工場へ行ってみればそこには十五、六の娘が圧倒的多数を占めている。何も知らない田舎の娘たちは花壇のある洋風まがいの寄宿舎にとじこめられて十一時間から十三時間の労働をしてきた。彼女たちの寄宿舎には「女学校」と称するものがあって普通の女学校へ行けない娘たちの渇望に答えるために裁縫、生花、ちょっ
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