盾ヘ日本の民主化の複雑な曲折につれて、次第に自由活溌な政治、経済、国際問題のとりあつかいをせばめられてきている。それに比べて娯楽、婦人、文芸雑誌は多すぎる。太平洋戦争中その雑誌の一頁毎に「米鬼を殺せ」と印刷していた『主婦之友』が今日でも婦人雑誌の第一位を占めている。『働く婦人』、『婦人』、『女性改造』などはそれぞれ特色をもった進歩的編集をしているが、他のどっさりの婦人雑誌はどれもこれも似たような内容である。言い合せたように現実には用布もなければそれを着こなす肉体も場面もないような外国のモードをのせている。
 出版協会の文化委員会および有識人の多くはこのような婦人雑誌の氾濫を婦人に対する悪資本の文化的搾取とみている。
 学術雑誌は営利を目的としないために用紙面でつねに困難に面している。数も少く発行部数も少く発行もおくれがちである。
 技術指導雑誌は有益なものは『科学と技術』そのほか一、二種にすぎない。農村のために直接役立つ雑誌も少い。戦争に協力した「家の光」社がこの隙間を縫って三種類の雑誌をだしている。講談社が従来通り幾種類もの低級な大衆、婦人、子供の雑誌を出しつづけていることも日本の民
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