五〇倍弱に騰《あが》っている。以来今日まで日本の物価指数は三つ四つの段階を経てとびあがりつづけている。
 一九四七年九月の予定的な計算でも千八百円基準の生計費は一ヵ月の公定価格による支出一、三五一円九八銭、自由購入による支出一、六八一円一二銭となって合計三、〇三三円一〇銭となる。したがって家計失調は日本において全般的な状態で、この事情は業種別勤労者賃銀表と見くらべると深刻な日本の全人民層の生活難を語っている。一九四七年七月統計局調査によればもっとも収入の高い軌道労務者男子一ヵ月三、七二六円五、婦人一、九七八円であり、婦人勤労者のもっとも多い紡績工業においては男子労務者一ヵ月一、四五五円六、婦人六〇九円である。職員は待遇が差別されていて幾分か増額されているけれども男子労務者と婦人労務者との間にある殆ど二対一のひらきは総《あら》ゆる生産場面の男女差別待遇としてあらわれている。日本では戦争によって全人口中三百万人の女子人口過剰を来している。過去のあらゆる時代に経験されなかったほど婦人の経済的独立の必要はつよく一家の経済的責任の負担が増大されている。改正憲法の上で男女平等がいわれ、平等の選挙権
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