アとを動機としている。林房雄を中心とする戦争協力作家は、雑誌『文学界』を創刊した。石川達三は「時代の認識と反省」という文章の中で「私は後悔しない。日本がもう一度戦うと仮定すれば私はもう一度同じあやまちをくりかえすだろう」と公言しながら、日本の民主化という重大な課題に嘲笑を向けている。吉田内閣の時からは、政府ははっきり反民主的方向を示しはじめた。片山内閣は、文相として森戸辰男を任用した。森戸辰男が戦時中著した『戦争と文化』が、戦争協力の書籍でないというためには自然でない努力を要する。そのような文筆活動をした人が文相とされている以上、政府の意図はこれらの戦争協力作家にあまりにも明らかによみとられた。石川達三は、四国地方の反動組織の出版している雑誌に巻頭言をかいた。九州の反動組織の出版物は、喜んで林房雄の文章を引用している。日本政府は、開拓団などに名をかりながら全国に秘密に組織されている旧軍人将校などを中心とする反動組織の存在を、議会では否定している。しかし、世界はその否定を信じているだろうか? 日本政府は否定が信じられていないことを知らずに否定しているのではない。これらすべてのことが、戦争
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