である進歩党によって提案された。社会党は、不意うちをうけた。「主権在民」を基本的性格とする憲法改正案は、このような幕間劇をもって十月貴族院本会議を通過し、翌十一月三日公布、一九四七年五月三日に施行されることになった。「主権在民」の新憲法は、日本にはじめて基本的人権の確立に関する諸項をもってあらわれた。男女平等も承認され、良心の自由も明記されている。しかしながら、この「主権在民」には余りに日本的特徴がつよくあらわれていて、国内の民主的な有識人および国外の有識人をおどろかした。それは、この改正憲法中になお天皇に関する特別な数箇条がふくまれていることである。その数箇条において天皇の世襲的な地位、それによってもたらされる身分の差・経済基礎が確保されており、少くない命令、決定の権利が天皇に掌握されている。一定の国の人民が天皇によって召集される議会をもつ[#「天皇によって召集される議会をもつ」に傍点]、ということは、議会へ天皇も出席するということとは、本質的に別のことである。一九四六年に日本の人民は、このようにして換骨脱胎させられた「主権在民」憲法をもつに至った。

 第三期[#「第三期」はゴシッ
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