蜑サの欺瞞性を表している。最近では一応民主的らしい編集をしながらトップの記事に天皇や皇太子の日常生活を大きく取扱って、戦時中の「国体護持精神」のヴァリエイションを流布させている『民衆大学』や『世界少年』のような雑誌もある。『民衆大学』は、ある種の編集方法において一つの典型を示している。この編集者は非常に多くリーダーズ・ダイジェストから学ぼうとしているらしく見受けられる。この雑誌は、四七年十一月号ではエマソンの自由と独立に関する言葉を巻頭言にひいて、民主主義を題目として編集をしている。翌月号は「天皇陛下の御日常」というトップ記事をのせ、その次の号には、三笠宮崇仁親王と閑院春仁氏の対談「皇室と国民を語る」をのせている。同時に、この号にはローザ・アイケルバーガーの『人民が、人民による、人民のために』という著書からの抜萃をのせている。
少年少女のための雑誌としては概して、幼年向きのものの方が、幾分注意ぶかく編輯されているが、初等中学程度の少年雑誌はおどろくようにその場かぎりの編輯が多い。全般からみて大人の雑誌がそうであるように子供の雑誌も日本の民主化の方向と保守的・封建的な要素とが一冊の雑誌の中でかち合っている。近代の軍事的物語はのせられないでも、日本の「武士」の物語がルパンばりの探偵小説や無意味な漫画といりまじっている。子供のための科学雑誌には『子供の科学』などがある。
雑誌の輸出 日本からホノルル、ソルト・レークなどにいる在米邦人を対象として十九点約五千冊の輸出が正式許可された。十九点のうち『主婦之友』や『婦人倶楽部』、『苦楽』、『キング』等のもと戦犯出版社であり現在保守的編集方向をもっている雑誌が多く選ばれていることは在米邦人の文化水準を示すものとして注目されている。
日本で発行されている外国雑誌は大体次の通りである。
タイム(極東海外版――英語)、ニューズ・ウイーク(パシフィック・エディション――英語)、ライフ、リーダーズ・ダイジェスト(日本語版)、ポピュラー・サイエンス(日本語版)、民主朝鮮(日本語)
4 書籍
一九四五年以後、言論と出版に対する制限の緩和によって書籍出版はおびただしい数にのぼった。四六年一年間の書籍出版用紙割当は一千九百万ポンドであったが、実際に使用された出版用紙は一億三千万ポンドにのぼっている。インフレーションのた
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