゙であるから内閣が直接割当てるべきであるという見解である。用紙割当の内閣移管についても旧情報局関係者の活動があった。自由出版協会も積極的であった。長年の言論出版統制に苦しんできた日本の各界は、用紙割当の内閣移管は、政府の言論出版統制に具体的根拠を与えるものとしてつよく反対した。けれども一九四六年にこの提案は実現した。出版協会の公的存在を認めることと、言論出版の自由を認めることを条件としている。この結果出版社のあるものは、内閣用紙割当委員会にだけ割当申請を出している。内閣の用紙割当委員会が最近の選挙において、過去の業績において文化的価値の認められにくい出版社の多くを委員としたことは、将来内閣がどの程度まで出版の自由に関する公約を実現しうるかという観点から注目されている。
一九四七年二月用紙入手のための物交が禁止されてから雑誌の大多数が休刊した。用紙割当委員会はこの状況を改善するために次のような声明を発表した。(一)割当外の用紙使用禁止。(二)割当は文化的価値判断を基礎として厳選による。(三)新しい雑誌の創刊および全集や講義録のような長期出版物への割当中止。
各雑誌が一様に六十四頁に限定された。しかし書籍出版の部面では粗悪な仙花紙の使用がますます多くなっている。仙花紙は統制外品である。
日本の出版業は一つの特徴をもっている。それは、極めて小資本の出版社が群立していることである。この現象は日本の資本主義経済の弱体を反映している。出版は自身の設備を所有しないでよいこと、使用人を多く必要としないことなどによって、軍需産業で小資本家となった連中が出版事業に流れこんだ。彼等は文化的責任を知らない。民衆の文化水準の低さと文筆家のインフレーションによる生活苦との間に、ブローカー的に存在して彼等の利潤を追っている。日本の小銀行の多かったこと、小新聞の多いこと、小売商の多すぎることなどと共通の現象である。
3 雑誌
用紙の最悪な事情にかかわらず一九四六年以来雑誌の企画申請は増大する一方であり、一九四七年末には三、〇〇〇種となっている。実際に割当をうけるものは一、八〇〇種に抑えられている。これに対して三百万ポンドが配給されている。しかし売れ行の多い雑誌社では仙花紙を使って発行部数の不足を補っている。
定価 印刷費、用紙の値上げその他物価の高騰につれて雑誌の定価
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