驕u日本文化を守る会」が結成された。日本文化を守る会は、その会の本質として出版、ラジオ、教育などに関するすべての問題に関心を示している。必要に応じて日本の文化を守る会の調査団が派遣される。発足したばかりの会ではあるが、日本の民主的文化の確立と平和のためにこの会の活動が期待される部面は広汎である。

 五、学生の抗議。
 今議会ですべての公定価格を七割値上げした政府は官立専門学校大学の月謝を三倍の値上げに決定した。月謝値上げはアルバイトによってやっと学問をつづけているこんにちの日本の学生にとっては、学問の自由をうばわれることにひとしい。男女学生は月謝値上げに反対である。月謝値上げによって学問の機会をうばわれる一方に、理事会案は学問と学内の自主をそこなう危険をもってあらわれた。学問の自由と日本の学問の自主性のために全国の高等学校、専門学校、大学、一一八校の学生たちは去る六月二十六日を期して学生ストライキに入った。
 日本にはこれまでもさまざまの理由から行われた学生ストライキが経験されている。しかし今回のように全日本的規模において学問の自主性のために休業が行われたことはなかった。この現象はこんにちの社会生活のあらゆる面で、さほど進歩的でない学生にさえも、民主的な民族自主の必要がどのように切実に実感されているかという事実を語っている。
 日本文化を守る会が結成されたこと、このように広汎な全日本にわたって男女学生の自主的文化学問への要求が表明されていること、また各方面に日本の軍国主義とファシズムの再燃にたいしてたたかい、平和の擁護のために働こうとする人々のグループが結成されたことなどは、日本の人民が日本の運命の現実について次第に真面目な自覚をもちはじめたことを物語っている。最近のジャーナリズムにファシズムにたいするたたかいをテーマとした論策が少くないのをみても、甘やかされていない[#「甘やかされていない」に傍点]日本の民主化の現実が諒解されるであろう。
 一九四六年以来文化の各方面に各種の委員会がもたれてきた。これらの委員会は民間人によって組織され、日本の過去の反民主的な文化伝統と統制とを打破する目的を与えられていた。現在でも政府の言論官僚統制として批判されている放送事業法案が委員制をもっているように、委員会のモードはすたれていない。ところがこんど制定される行政施行法によれば
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