ゥ分の未来のためにもっている誓いはただ一つしかない。それは欺瞞のない日本の民主化と自主自立の民族生活をもつことである。新しい五人の放送委員はあらためてそのような誓いをするわけなのだろうか。
なお放送委員会はその職責をはたすために商業、工業、金融、労働、農業、教育、地方自治などの団体代表の意見を徴するようにつとめなければならないとされている。この諸団体のなかに民主的な文化団体があげられていないのはなぜだろうか。一九四六年にはあのように日本民主化のキー・ポイントとして内外から注視された婦人の団体があげられていないのはどうしたわけであろう。日本の青年のこんにちの生活内容は日本の民主化と世界平和のために、彼らに豊富な発言の要求を感じさせている。その青年団体が放送委員会の関心からとりおとされていることは不可解である。
委員の欠格条件のなかにも民主的委員を選出する必要以上の制限を加えているとみなされるものがある。
政府の放送事業法案をめぐって加えられている批難の中心点は、ラジオの官僚統制による言論抑圧の方向である。この批難にたいして政府はむしろ弁解困難な立場にある。言論・出版の自由をおびやかす用紙割当庁法案と並行するラジオ法案がより広く民衆の声を反映する性格をもっていないことはあまりに明瞭である。政府は一方において労働法の改悪、公務員法案の改正、軽犯罪法の制定、教育の民主化をあやうくする教育委員会法案などをすすめている。これらすべては政権の買弁的性質の増大とともに一般の批判にさらされる立場におかれている。日本の人民は今日においてはじめて憲法に規定されている言論の自由と良心の自由とを行動のうえに発揮する必要にせまられている。戦争挑発と日本の軍国主義の再燃にたいして青年と婦人とは胸にいっぱいの抗議をいだいている。ラジオはその時の政府によって官僚統制され、また天降りの独裁放送を行うことを思えば、政府の放送事業法案に対する反対はきわめて強い現実的な根拠をもっている。
一九四六年に組織された現在の放送委員会は日本のラジオの民主化にたいして負わされた責任において、慎重に政府案を検討した。公聴会も開いた。そして政府の放送事業法案にたいして、より具体的にラジオ民主化の可能性をもった放送委員会法要綱を作成した。
現放送委員会の放送委員会要綱は、原則として、国民生活の各面を代表する男女三
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