でないかという気運が出て来ているそうである。
「自力更生か! フフン」と年よりでも外方を向く気分だ。そういうようなことが書いてあった。
私は折から来ていた、これは木曾の方の人に、その手紙のなかのことを話したら、
「それは、どこでもだね」
と云った。
「木曾の方は又違った風で、えらい目をしている」
木曾は知ってのとおり山々が大抵御用[#「御用」に×傍点]林で、その山の根がたの住民の生計は炭焼き主だが、炭が俵二十何銭では一ヵ村かたまって炭の材料になる御用[#「御用」に×傍点]林の木を払い下げをして貰うことは出来ん状態になって来た。
さりとて木がなくては炭はやけず、損とわかっても炭をやかねば命が繋《つな》げないから、村では評議して、先ず何人か犠牲をきめておいて、御用林[#「御用林」に×傍点]の木を〔六字伏字〕して炭にやいてしまう。村がそれでどうやら食って、犠牲者は仕方がない。ブタ箱[#「ブタ箱」に×傍点]行きである。そうして、やいている。
だから、今度の〔二字伏字〕が〔三字伏字〕の〔二字伏字〕だとふれても、一向ききめがないそうだ。人民が生計のためになくてならない枝一本でも、伐れば懲役
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