夜歩くといけないからカンテラまで用意しました。ほんのべん当、肩からいつもかけているカバン、風呂しき包み(いざと云えば背負えるだけの)で行きます。おみやげは、かさばらない布類でかんべんして頂くこととして。一昨日から、もう切符買いに着手しましたが、本月一杯は強制疎開が急テンポ、大量なので迚も手に入らず。どうしても来月四日以後でなければ不可能です。却って丁度いいと思います。やっぱり八日後に出かけます、寿は、こちらへ来るにしても持ってくる米がないからその配給の都合で八日に来られるかどうか分らないそうだし、てっちゃんも果してどうか分らないし。やっぱり八日まで居りましょう、その方がいいわ。そして出かけます、ゆっくりと。それまでにひまのときは、郊外へ泊りに行ってもいいでしょう? 例えば鷺の宮や成城の友達のところなど。
 ここのうちは、戦災、疎開受入れ家屋の実を果していて、次のような構成となりました。わたし、G夫妻、細君の両親、兄弟が出たり入ったり、一人の弟はこっちへ転出(配給をここでうける)Gの父(鉄道につとめ、家族赤羽で強制疎開となり)合宿暮しではやり切れないから、こちらで配給をとって一週一度ぐら
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