州の或る種の良質な精神が、第一次大戦から今次の大戦までの間に経て来た苦悩と努力と混乱(現実の見かたの小ささ。代表的個人――政治家で世界の平和が支配されているように考える誤り)とがまざまざと理解されます。
本国の運動に対してさえ良識ある者は有害としたローゼンベルグの「神話」がこちらで売れたのは、悲劇の一つです。その亜流を輩出させたのは更に。一般に他国の文化その他を摂取するとき、素地との磁力関係で、精煉された面より、より粗な面が吸着するということは注目に価すると思います。どの国でもそういう危険をもっているのね。何故でしょう、歴史の喰いちがいの大きい二者の間で特にこのことは顕著です、文学者は、飽くまでも善良で、賢くつよくなければなりません。自身の善意を、悲劇たらしめてはなりません。ジュール・ロマンは、さすがに平静を失わず七つの謎を解明しようとして居りますが、善意が悲劇に到達したそのことについての反省はされていません。善意のボン・ノム加減で赤面していません。従って彼はこの本を書くことで崩れた善意像の破片の整理をしたでしょうが、果して、次の段階で新しい善意で羽搏き得る発展をしたでしょうか。生物
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