ると洗います、ゴロゴロになってしまうのよひどくて。頭巾をこしらえようと思いますフードを。一陣の風がふけばその風のまきおこすホコリは髪と皮膚を滅茶滅茶にいたしますから。普通の服装では駄目です目下ゴム長を見つけ中です。わたしがフードをかぶりジャンパーを着(いつもきているの)ゴム長をはいたら、それこそ何かのマスコットのような姿になりますが、ゴム長でもなくてどうしてあの道をそちらへ行けるでしょう。わたしがマスコット姿でそちらへ通うということこそマスコットなのだわ私たちの暮しの、ね。呉々もお大切に、そちらが、狐火のようなものには丈夫なのは安心です。明日おめにかかれるかしら。くすぶってもいない顔を見て頂きましょう。
 では

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[自注5]遠方にいて――当時百合子はソヴェト同盟に滞在していた。
[自注6]カジョンヌイ――「役所の」の意。
[自注7]古すぎて駄目でしたって。――監獄で雑誌は一定の時期がすぎると差入れを許さなかった。
[自注8]「菊の花」「根」――中野重治の作品。
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 三月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 三月十五日
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