ことには何かの理由があるでしょうね。一ヵ月に一度ずつ、こうしてつい十四五間先にバクダンがいくつか落ち、火と闘っていると、いやでも度胸が出来ますね。どういう線があるのかしらないけれども、うちはその線の下で、いつもほんの指のかげん(ボタンを押す)みたいなところでタマはまぬかれて居ります。しかし保たないでしょうね、ここの線はB29[#「29」は縦中横]線らしいわ、そっちの受持ちらしいのね。寿が、いい工合に前日(二十五日)来ていたので昨日は火の見張り、水くみ、けさは雪かき、情報ききと親身に活躍してくれて、大いに助かりました。いる女の人は火が近い、となると、自分のものをもってうろうろして、私が云ってやっとバケツもって出てゆく程度ですし、最後まで安全と思っていたところが案に相違して、ひるも夜も同一線に落してゆくというようなことで浮腰たって居りますし。今にきっと何とか云い出すわ。そのときわたしは是非いてくれ、とは云いたくないのよ。寿が来てもいいと云ってくれるから、そういう時は寿がここに暮してくれるよう、開成山に談判しましょう。国が用事で上京する、そのとき寿がいては困るというのは余りひとを馬鹿にした話
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