傾斜がゆるやかでカンノン開きで見てくれの薄板で、それが弱点ね、機銃の玉なんかいくらでも通ります。其に、生活万端やるとすると狭いわ、一人で一杯です、電燈もないし。
 国は荷物もってゆくつもりで例によってどたん場まで愚図愚図して居たら、一昨日以来一般小荷物受付中止で、家じゅうひっちらかしたまま、自分のふとん[#「ふとん」に傍点]さえしまわず行ってしまいました。〔中略〕まあ今時の往来ならそんなものかもしれませんけれど。当分小包も受付中止よ。田舎からは来るのでしょうね、さもなければ、わたしたち干物よ。
 この間の火曜日、ね、お目にかかって帰って来て、午後から友達が来ました。何だか四角いものをふろしきに包んで、はいとくれました。近頃は勘がよくなっていてね、其はすぐお重とわかりました、が、どうして又こんなおみやげがあるの? と訊いたら、いやあね、お誕生日じゃありませんか、とぶたれてしまいました。本当にそうだった! マア、マアとびっくりして、よろこんで又呆れられてしまいましたが、わたしはしんから可笑しゅうございました。だって、火曜日にお会いして、十三日なのをわたしは勿論忘れていたし、あなただって決し
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