壕が庭でさむいし、子供づれだし、大変でしょう。手伝いがみんないなくなるらしいし。国も良人、父として苦労しているのも薬です。あの健康であの年であの知慧で、ひとからサービスだけされて暮すというのは法外ですものね。おのずから成立いたしません、今の時代には。
 きのうの元日はうれしい元日で友達が三人来ました。一組の夫妻、この人は旦那さんが青森へ行くために。もう一人は先日山西省の学術探検から戻った人。いろいろの経験をして来たのですが、一米の間に二発ずつという風な機銃の集注をうけない限り、なかなかゆとりなきゆとりというものもあるものなのね。人間が、そんな風な危険に善処して、勉強もするだけして来ると、颯爽としたところが出来て、こころよいものですね。人は、その人なりの道によって、何か鍛えられる道を通ることが大切ね。そして、鍛えられるということを招く先ず第一の生活態度のまともさが大切ね。まともに生きない人には、天は決して人間鍛錬というような貴重な門を開きません。
 年末に、おせいぼ、お年玉として書いて下すったお手紙。さっきお正月らしく元禄袖を胸の前にかき合わせて、もんぺの足どりも可愛ゆく門まで見に行きま
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