も今までの生活ではやれません。チジョサン[自注1]によび立てられてかけ出していたのでは、ね。サイレン丈で結構です。一日に一貫した心もちで過せる時間がなくては何をかくどころではないわ。あんなに手紙さえおちおち書く間がなかったりして、ねえ。四月から去年一杯相当骨を折ってわたしの手は勲章ものにひどくなったのだから、今年はもう本職に戻ってもよろしいでしょう。
 留守に来て貰う人のことはなかなかむずかしゅうございます。この前の手紙で申しあげた伝八さんなる夫婦は、二人の生活費をこちらもちという条件なら承知するのです。しかし生活費は刻々上騰ですし、わたしはそれこそ大局的に可及的営養をとらなくてはならないしすると、生活費の負担は案外でしょうと思われます。ここの生活はどうやるにしろ、国府津の 280 の内からですから、雑支出を加えて容易でないでしょう。机に向っている時間、何か彼か考えを辿っていられる時間をとろうという計画なのです。国がハガキよこしてね、僕があっちへ行ったら敵機も追っかけてきて初空襲ありとありました。こっちへ暮す期間は益※[#二の字点、1−2−22]少いでしょう。あちらはもう雪だそうです。
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