ては大変なの。大いに奮励しておかないと安心してアンポンになれないでしょう、間に合うかしらと寧ろ心配よ」好ちゃんは幸海外にいたのではないからまさか三年はかかりますまい。緑郎なんかどういうことになるでしょう。只交戦国人として抑留されたのではないから。ベルリンなんかにいた日本人の中で動きかたが目立ったということは、単純ではありませんから。
今ここには岩本の文子さんというのが(先生)来て居ります。子供の世話を見たり台所手伝ったりして、前坐の方の部屋に居ります。二階はあいているのよ、お母さんが昼寝におあがりになる位。二階は大変むし暑いのね。開成山では秋でしたからこんなに汗が出ると逆戻りでおどろきます。しかし、幸|蚤《ノミ》が居りません。ついこの間畳干して大掃除なさいました由。裏に出来た道路は丁度お寺の崖をこそげとってうちの裏の細い溝のすぐ上を通って居て、そちらの道の通交[#「交」に「ママ」の注記]人は自転車やオートバイで、すこし目より高いところを通り、外から内が丸見えです。竹垣を結ってあります。それでもこの間は二階に夕闇まぎれに人が入っていたとかいうことがあります。少くとも本月一杯は居ようと思
前へ
次へ
全251ページ中243ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング