って来て、あの夫婦は自足しているようです。達ちゃんのこと、あきらめにゃいけませんと二言目には云うと友ちゃんが述懐しています。その気持はよく分るわねえ。燈を明るくし、ラジオは天気予報まで云うようになったとき、あっちこっちで帰って来るとき、もう帰る希望のなくなった友ちゃんやお母さんのお気もちは想像にかたくありません。友ちゃんは臥ることもなくて暮して居りますが。
経済の面では、自動車を処分したり、又達ちゃんが出る前に部分品の整理をしたりしてちんまりしてゆけば輝が成人する迄はやって行けようというお話です。わたし達の出来ることはいつも乍ら些少です。基本をそうして何とかやれて行ければ大いに助かります。お母さんは「わたしのいるうちは何とかやっちゃいこうが先は長いから」とおっしゃいます。「それは全くそうですが、兄や弟が子供の二人ぐらいは何とかいたしますよ」「ほんにの、うちの兄弟は仕合せと思いやりが深いからどうにかなろうと云っちょるの」友ちゃんは自分の健康が十分でないことで消極になっているようです。「これ迄あんまりふ[#「ふ」に傍点]がよかったからこんなことになったやしれん」と云っているそうです。余り
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