、十日に鷺の宮へ行きました。文報のことやその他あるので。十一日早朝八重洲口の列に立って急行券を買い、十二日朝五時に家を出六時半から立って、八時半の急行に乗りました。この時間にゆくと坐れました。そして、島田へ着いたのは、十三日の殆ど午頃。十二日に四時に起きたときから算えると、三十二時間かかっているわけです。汽車丈二十六時間ね。横浜辺からもう立つ人が出来はじめ名古屋で通路がふさがり大阪以西は謂わば二等も三等もないという有様でした。久喜で降りるときには窓から降りました。岩国では昇降口から出ましたが。半島へかえる人々解除の人々、それがみんな体のもてる限りの荷物をもつのだからえらいことです。托送が無事に着くためしなしというような不信用が漲っているし、解除の人々は大体自分の荷物の内容について神経過敏ですから。
三時三十五分位に広島へ着く筈のところ七時半頃に着。いつものようにのりかえようと思って一旦降りましたが、駅は全く旧態なく地下道丈もとのままです。島田へ行くのは何時に出ますかときいたら、片腕のない少年駅手が、四時二十分! と申します。四時二十分って――午後? と訊いたら四時二十分て云ったら午前
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