うでしょうか、うまく行けば本当にうれしいけれども。もしうまく行けば三四日のうちに行ってしまえるでしょう、更に待つようなら、私は何とかします、勉強できるように。幸このあたりは比較的平穏で居りますから。わたしの苦手のうるささもありません、思ったよりずっと。尤もそちらへゆくのが分っているからでしょうが。いいときに東京を去ったと思います。
 今はここまでにしておいて、あとは郡山から帰ってからね。

 二十五日 半ぱな紙でごめんなさい。八行分きってあります。
 きのう、はじめて明るい電燈になりました。何と晴やかでしょう。昨夜雨がふりました。雨がふるのに外が明るいのよ、庭のいろいろのものが見えるのよ。びっくりしました。井戸のところに何年ぶりかで灯がついたの、雨がふってそれでも外が明るいのにこんなにびっくり珍しく眺めるのですものねえ。東京に街燈のつくところはどこいらでしょう。本郷では西片町と大学前通り、うちの前の通りすこし丈です。あとは街燈そのものがないのですものね。
 島木健作が鎌倉で病気により死去しました、ペンの手紙に「書いて、死んで、あとに何がのこったでしょう」と。
 二十六日に第一次進駐が開
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