どう行くかしら。今度帰ったらそのことすこし本気で考えましょう。疎開のつもりで、かしてくれればいいのだわ、ねえ。ヴィタミン剤のこと承知いたしました。ほかの「かんづめ」などはいかがな都合でしょう? 江井(覚えていらっしゃる? あの律気なもとの運転手)がお見舞と云って二つくれたのがあって大切に大切にリュックに入れてここまで背負って来て居ります。安着の御祝にさし上げたいこと。
切手のことわかりました。本と一緒に送りましょう。封緘はどうでしょう、このお手紙は何だか切手のはりようのトンマさに覚えがあるようですが。十枚も送っておきましょうね。
連絡船についての御注意特別ありがたく頂きました。自分でも一番気になって居りました。御承知の通り、わがこゝろ 雲のごと 天かけれども 身は あはれ金槌。ですものね。必ず昼間にいたしましょう。万一[#「万一」に傍点]ユリがゆくときではなく。きっと。この海をわたるときユリは大蛇《おろち》よ、こわいでしょう。太ったゆっくりした大蛇を思うと、凄味がなくて笑えるばかりね。あなたも、ちがったところで、そんなおろちを御覧になるのもわるくないでしょう? おろちのうれし涙って
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