子で舞台監督になりたいひとが来ます。日本で、女で、この仕事をしたいというのは、丁度寿が、指揮者になりたいと思っているのと同じに実現のむずかしい願望です。山本安英に相談したりしてもやはりわたしが見当つけられる範囲しか見当がつかずとどのつまり戯曲をかきました。自分で一年ほど芝居をやって。はじめ書いたのは、対話でした。次のは少女歌劇じみていました。この間もって来たのは、チエホフ風の味で、しかも十分芝居になっていて、情感もゆたかでなるほど芝居のかける人はこういうものか、と素質のちがいにおどろき、よろこびを感じました、その娘さんは戯曲のかける人なのよ。そしてそれはやはりザラにはないことです。まだ二十三四なのよ。近代文学の中で婦人のドラマティストは殆どありません。岡田禎子なんか、会話や人の出し入れの細工が面白いという程度の作家だし。
 いろんなそんな話していたらばね、そのアキ子[自注15]さんがいうのよ、「わたしが(その人)芝居やめたいと思っていたら何とかさんがふっと女の人は逃げ道があるもんだからじきやめたがったりする。いつか先生が(これはブランカよあなかしこ)芝居の人たちにお話をなすったとき、よ
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