の暮しはそうは行きません。ペンにしろ、良人はルソンです。この何年か散々要領[#「要領」に傍点]で立ちまわった揚句、要領果てと申せます。ペンはその惨憺の意味を感じるにしては小さい人間ですが、其でもこの頃は、もっともっと大きい淋しさのためにうんと準備しなけりゃならないと思うわと申しました、今の淋しさに比べてね、絶対の喪失に対してです。そうでしょうと思います。この人たちの場合は。だって、要領よく立ちまわったつもりで、余り目前で細かく立ちまわって一まわりしてあっちへぬけてしまったのですものね。もともこもなしだわ。要領なんて何ときびしい返報をするでしょう、人生は嘘を許さないと思います。
明日帰って一週間か十日猛烈に忙しく、又手紙もさし上げられまいと思います。
わたしは毎日少しずつ手紙かこうと思っていたのよ。日記として。そうしなくては一ヵ月が長すぎて。ところが昨今の暮しは一ヵ月の長い感じはそのままのくせに、一日がやたらに疾走して、朝から夜まで事、事、事、でつまってしかも其は、田舎から人が突然来た、荷物をたのむ。急に切符が来た、じゃあ荷物をとって来なくちゃ。そういうことで。こっちへ一応来たらばこ
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