ン時代の紛糾を実によく理解しました。木菟党はミミズクの鳴声を真似て合図とするブルターニュの農民兵で、その首領をめぐりフーシェの派遣した女間諜をめぐり、その女の人間らしい死に方を大団円とする伝奇風の作品ではありますが、ブルターニュ地方の特色、農民の狂信と無智、其を利用する坊主、それらすべてを利用する亡命貴族、その高貴さと卑俗さ、農民の剛直さ智慧とどん慾さ、なかなか大したものです。
この時代の人々(フランス)の間にあったパリとブルターニュとの国[#「国」に傍点]のちがうという観念など、又ナポレオンに対する感情など、実によくわかりイギリスの狡猾さもよくわかります、モロアの「英国史」はこの一七九三年をめぐるイギリス対フランスをどう書いて居りましたろう。
バルザックの筆致は極めて簡潔です、正確に、そして血肉をもっています。ディケンズが思い合わされます。「二都物語」において、ディケンズは果して、イギリスのフランスに対した真髄をとらえ得たでしょうか、其とも寛大な紳士を描くことしか出来なかったでしょうか。そういう点から又よみ直して見たいと思います、ヨーロッパの文学は、こういう共通な一つのテーマをめ
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