では最近シュバリエがマーキによって命を失いました。ピアノのコルトだの所謂名人が同じフランス人によってとらえられました。シャトウブリアンの孫の作家がどっかへ亡命し、NRFの或編輯は自分の頭に玉を射ちこみました。街の歌手、あんなにフランスの民衆が彼の粋さを愛していたシュバリエですが、悲しいかなその粋《イキ》は商品であって、巴里っ子魂ではなかったらしいのね。芸術的技能が商品化した連中は、国際市場の変動につれて、価格暴落でね。
 さて、話は家事茶飯に戻ります。樺太で電気技師をやっていると、ちがうわね、こまかい当節の波にもまれていなくて、若々しい専門的興味があって疲れたが面白うございました。この人が息子をつれて神田で見つけた大得意の本は、十九世紀の水力モーター(水車)について書いた本です。英語の。今の文献に、そんな大時代のものの説明はないから閉口ですって、そういうキカイを実際に使わなくてはならないからね。電気の人はなまけていたら飯のくいはぐれになってしまう由。この人の弟は東京暮しで、会社の拡張係か何かやっていて、もまれていることねえ。もまれて(スフの布のように)ついたしわ[#「しわ」に傍点]がそ
前へ 次へ
全357ページ中302ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング