八月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
八月十七日
きのうの夜、七月二十四日のお手紙到着しました。長い旅行を迷わずに来て、なかなかいじらしく思いました。安心いたしました。どんなに手間どっても来たのならよかったわ、ね。
雹のあとおかきになったのね、ガラスも面くらっただろうとあり、あれがいきなりガラスに当る音思いおこしました。全くね、あれでうちは、トマトがすっかり花をおとされて駄目となり、南瓜の葉は穴だらけ。わたしは喉風邪をひきました。犬を丁度つないでおく時季でした、キャンキャン鳴くのよ、こわいのと、雹にうたれるのとで。台所の古レインコートをかぶって、三和土《たたき》の中へ入れようとして二匹いじっている間に、すっかり雨がとおって、背中がぬれました。そのとき古田中さんがあの孝子の俤をもって来ていて、そのままお相手をしていたら、ぬれたのは乾いたけれど、夜中ドラ声になってしまいました。じき治ったけれども。白藤およみになって? まだでしょうか。
おなかの調子、ぶりかえしは閉口ですね。あなたの御努力にたよって安心しているしかないというのは、何度くりかえし考えてみても
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