没収財産を買っては、息のかかった成上り貴族をこしらえはじめてから、再び対立の根を与えてしまって、遂にルイ十八世というようなものを出現させ、ダラダラとナポレオン三世まで来てしまったのでしょう。ナポレオンの功罪は大変大きいのね。思われているよりも大きいのね。マリ・アントワネット、カザリン・ド・メディシスなどは、所謂歴史上の定評を訂正されていますが、マラーなんかはどう見られているのでしょうね。本場には、いろんな人のメモアールなんかがあって、ユーゴーは「九十三年」は其等をよく調べて居ります。カーライルなんかあの歴史の中でどう見たのかしら。
バルザックはナポレオンを、一七九五年の舞台にのぼせていますが(暗黒事件)深く入っては居りません。
ユーゴーが、全輪廓から見てゆき、常に人間の進歩を信じる動機で其を見ているところは、ロマンティシズムの積極の面ね。笑い出してしまうのは、進歩に伴っておこる大波瀾は歴史の必然であって、その必然は神様だけがしろしめすところだ、という文句です。雄大なものね。どっしりそう云って坐っているのですものね。
こうしてみると、ユーゴーは、非常に大きく力づよく複雑な機械をその
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